第152章 逃がすな

その一部始終は、宮本陽叶と福田祐衣の耳に筒抜けだった。

つい先ほど、大原社長は慌ただしく出て行ったかと思えば、社長室のドアを閉めることすら忘れ、廊下で怒声を張り上げていたのだ。

井上颯人を頭ごなしに怒鳴りつけるその声を聞きながら、福田祐衣は思わず吹き出した。

深淵を覗くようなダークグレーの瞳が、彼女の口元に浮かんだ隠しきれない笑みに、じっと注がれる。

宮本陽叶は何も言わず、ただ静かに彼女を見つめていた。

福田祐衣はその視線に気づく様子もなく、脳内で井上颯人がこっぴどく叱られている無様な姿を想像しては、胸をすくような思いに浸っていた。

ああ、いい気味だわ!

不意にドアが押し開かれ...

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